財務会計は何のために行うもの?
企業の会計には大きく2種類あり、財務会計と管理会計があります。
財務会計は、企業外部への情報提供を目的としており、主に投資者への説明責任履行機能及び情報提供機能と投資者、株主、債権者の間の利害調整機能を果たしています。
※管理会計は、企業内部での会計であり経営者が重要な意思決定を行えるような数字を提供したり、利益率・原価率を適正に管理したりすることが主な目的で企業外部へ出ていくものではありません。
説明責任履行機能
説明責任履行機能とは、株主から委託された資本をどのように管理し運用しているかを財務諸表を通じて説明する機能です。
投資者からしたら、投資をした結果がどうなっているかが見える状態にしてくれないと困りますよね。
情報提供機能
情報提供機能とは、利害関係者が今後の企業への投資を行う上で有益な情報を提供する機能です。
投資家は、企業の財務諸表をもとに将来の企業成長を予測し、投資を行います。
利害調整機能
利害調整機能とは、財務諸表に表示される資産、負債、純資産、収益、費用、利益を適切に表示し企業の利害関係者の利害を調整する機能です。
どの利害関係者にも財務諸表を示すことで同一の情報が与えられることにより有利不利のない情報提供が可能となります。
静態論・動態論
財務諸表における資産・負債の考え方として静態論と動態論という考え方があります。
静態論は比較的古い考え方で動態論は新しい考え方となります。
静態論
静態論とは、昔の証券市場があまり発達していない時期において企業の資金提供者として重要な利害関係者は債権者でした。よって債権者保護を目的とした会計思考となります。
債権者は投資者と異なり、株主総会等での意思決定に参加できず、倒産時には債権回収が出来ないというリスクを背負っています。
企業が倒産した際にも債権者へ財産を配分できるかという点に着目した考え方が静態論になります。、
この静態論のもとでは、資産は「個別的な財産価値をもつもの」、負債は「法的確定債務」という定義がされており、利益の計算は「期末純資産ー期首純資産」で計算されます。
つまり、倒産した際に資産を全部売却し、払わなければならない負債(法的確定債務)を支払ったあとに債権者に分配できる残余財産(債務弁済力)がいくらあるのか?という計算を重点においたものとなります。
動態論
動態論は、近年発達してきた証券市場により企業の資金調達の源泉が債権者から投資家へとシフトしてきました。投資家は債権者と異なり株主総会で経営の意思決定に関与でき、倒産した場合には出資した額までの責任(有限責任)で済みます。
このことから、動態論では投資者保護を目的とした会計思考となります。
投資者への情報提供として、今後の意思決定をするにあたり重要な情報である収益力の算定を重視しています。
動態論のもとでは、資産は「企業資本の運用形態」、負債は「企業資本の調達源泉及び弁済義務を負うもの」であり、利益は「収益ー費用」で計算されます。
つまり、負債で調達した資本が資産としてどういう形態として保持しているか、負債に関しては法的確定債務よりも広い定義となっており、投資者にとって有用な実質的な資産と負債を表す考え方になっています。
まとめ
財務諸表の考え方はその時代に応じた考え方へと変化していっており、現在においてもソフトウェア産業の発達等もあり会計基準が変更されていくかと思います。
会計基準の歴史を知っておくと複雑な会計処理も答えを導きやすくなります。
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